アルカション(ARCACHON)/目黒

目黒駅から歩いて5-6分、杉野服飾大学方面へ向かう静かな住宅街に位置する「アルカション(ARCACHON)」。漫画「美味しんぼ」90巻「感動の多い料理店」で紹介されたことで耳目を集めたフランス料理店です。
一軒家レストランのような佇まいであり、アットホームな雰囲気。感じの良いご夫婦がニコニコと出迎えてくれ、リラックスできる環境です。
酒は安く、グラスシャンパーニュが1,280円。グラスワインも千円前後のものが殆どで、ボトルのワインも1万円を切るものが主力です。もちろん何万円もする高級ワインの用意もあります。
アミューズはシラウオを揚げたもの。サッと揚げられ、淡い甘みとほのかな苦味が泡にピッタリ。アスパラソバージュは野生的な緑の香りが鮮烈です。
続いてウニのムースとオマール海老。これはめちゃんこ旨いですねえ。写真からは見え辛いですがオマールがゴロゴロと気前よく組み込まれており、ウニの濃厚な甘みとクリーミーなコクが甲殻類の力強い旨味と溶け合います。コンソメのジュレからは透明感のある塩気が感じられ、全体を爽やかに整えます。
自家製のスモークサーモン。サーモンからはスモーキーな香りが感じられ、しっとりとした口当たりを楽しみます。程よく旨味が凝縮されており、ホワイトアスパラガスの土っぽい味覚と良く合う。
パンたちは王道の味わいで、上質なバターもたっぷり用意してくれリッチな気分です。
お魚料理は甘鯛とホタテを組み合わせたひと品。甘鯛は鱗をパリッと焼き上げ、香ばしさとほのかな塩気が際立ちます。身はふっくらと甘く、鱗のクリスピーな歯ざわりがコントラストを生む。ホタテはサっと焼かれており、濃厚な甘みと弾力のある食感が堪りません。
メインはエゾジカ。お肉はモモを用いておりシットリとした口当たり。赤身の濃厚な旨味と繊細な甘みが際立ち、甘酸っぱい赤ワインソースに良く合う。仄かにミントの風味が感じられるのも面白い。野趣と洗練が融合した傑作です。
お口直しはヨーグルトのひんやりしたやつ。上質な酸味が味蕾を優しく撫でていきサッパリとリフレッシュ。薬草っぽい香りが取れるのもオシャレです。
デザートはフォンダンショコラを選択。表面はしっとり中はトロトロ。濃密なカカオの香りと甘みが口いっぱいに広がります。白コショウの風味も感じられ遊び心のある味覚。クラシックなフランス料理の締めにふさわしい濃厚なひと品です。
ハーブティーとお茶菓子でフィニッシュ。ごちそうさまでした。

以上のコース料理が1万円ほどで、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり1.5万円。芯のある上質なフランス料理を楽しんでこの支払金額は実にお値打ち。こういった哲学のある真っ当なフランス料理店は大好きだ。

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魚市(うおいち)/天王寺

天王寺駅すぐのアポロビル地下2階に位置する老舗の海鮮居酒屋「魚市(うおいち)」。1943年に魚屋として創業し、1972年に当店として新たな扉を開きました 。軒先には生簀があり、その日の自慢の魚介類が泳いでいます。
店内は結構広く、カウンター席にテーブル席、座敷の個室も用意されています。スタッフたちは和気藹々とした雰囲気で、軽口を叩き合いながら楽しそうに働いています。従業員の仲が良い店は大体良い店だ。
私は「店長おまかせお造り定食」を注文。1,800円でお造りの盛り合わせにブリカマの煮付け、潮汁に小鉢とゴハンとお漬物が付くとは天王寺の奇跡と言えるかもしれません。
お造りの盛り合わせ。その日の美味しい所を上手く見繕ってくれます。中でもマグロは居酒屋のランチのレベルを超越しており、強く記憶に残りました。
ブリカマの煮付け。これは果たしてカマなのか?と思うほど上手く骨を取り除いてくれており食べやすい。脂がたっぷり乗り、ほろほろと崩れる柔らかさに煮上げられています。甘辛いタレがブリの脂と絶妙に絡み、ゴハンが進むのなんのって。
白ごはんもきちんとしたもので、お造りとブリの煮付けのお供に最適。今日は糖質オンで行こう。
潮汁は魚の頭や骨から取った出汁をとっているようで、透き通っていながらも濃厚な味わい。魚の甘みと旨味が溶け出し、ほのかな塩気との絶妙なバランスを奏でます。
お漬物も恐らく自家製で実質的な味わい。小鉢はひじきの煮物。ほろ苦い風味と優しい甘さが、お造りの鮮烈さや煮付けの濃厚さを引き立てる名脇役。
以上の定食が1,800円と大変お値打ち。こうなってくると3,500円の「DXお造り定食」も気になってくる。「スタンドふじ」「スタンド 富(とみ)」にせよ、天王寺は謎に海鮮系の居酒屋が充実しており魚食が捗る。次回は夜にお邪魔したいと思います。

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もつ焼き ひろや/目黒

目黒の権之助坂を下り、目黒川と目黒通りの交差点近くの「もつ焼き ひろや」。私の推しの鰻屋「うなぎと食事処 めぐろ大黒屋」の大通り側に位置します。店員がエプロンを外して軒先でタバコをふかしているのがクールです。
店内は賑やかな大衆居酒屋といった風情であり、厨房を取り囲むカウンター席にテーブルもいくつか。おひとりさまからグループでの飲み会にも幅広く対応しています。
飲み物は安くビールは500円とか600円とかだったっけな。焼酎や日本酒も用意されており、とりわけ日本酒がお値打ちに感じました。
牛もつ煮込み。大鍋でじっくり煮込まれた濃厚なひと品で、ハチノスやホルモンなど多彩な部位がゴロゴロ入っています。調味は味噌ベース。やや臭みはありますが、牛もつ煮込みとはこういうのがいい。
おしんこ。キュウリと大根、ニンジンが主力であり、浅漬けのシャキッとした食感が特長的。ほのかな塩気と酸味が箸休めに最適。380円ながら質も量も中々のものです。
酢もつ。モツを軽くボイルし、酢でさっぱりと味を調えます。やはり多少の臭みは感じられますが、これだけ入って380円という価格設定を考えるとありよりのありです。
「はらみユッケ」はタレ味で注文。低温調理で仕上げたハラミは、美しい肉色が見た目から美味しい。ムチムチとした弾力が心地よく、こちらは臭みは一切なし。下手な焼肉屋のユッケなんかよりも全然レベルが上です。
串焼きに入ります。まずは上タンとハツ。タンは思いのほか上質で、表面に軽い焦げ目をつけつつ、中心はしっとりジューシー。噛むほどに濃厚な肉の甘みと香ばしさが広がります。ハツはコリッとした弾力ある食感とクセのない味わいが心に残りました。
厚揚げ。酒場の定番たる味覚であり、たっぷりのネギが嬉しい。そういえば当店は全体的にネギの使い方の気前が良い。
うずら。こちらも酒場らしいひと品であり、卵好きには堪らない一本です。あと、この串焼に付随する赤くて辛いのなんだろう。見た目ほど辛くはありませんが、後を引く悪魔的な旨さがあります。
ピーマンだんご。粗挽きのもつ入りダンゴを濃厚なタレでじっくりと焼き、シャキっとしたピーマンと共に楽しみます。肉ってミンチにしただけで何で美味しくなるのだろう。
以上を食べ、軽く飲んでお会計は4千円強。目黒での飲み食いという意味では良心的な価格設定であり、何より予約ナシにフラっとお邪魔できるのが凄くいい。週末は15時オープンと使い勝手抜群。目黒川沿いのお散歩ついでに是非どうぞ。

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prospero(プロスペロ)/新栄町(名古屋)

東桜にあるイタリアンレストラン「prospero(プロスペロ)」が食べログの百名店に選出。新栄町駅から歩いて2-3分の場所に位置します。
店内はカウンター席に窓際の特等席、奥には個室化できるお部屋もあります(写真は食べログ公式ページより)。則武哲郎シェフは東京やイタリアのヴェネト州、トスカーナ州などで腕を磨き、2018年に当店を開業したようです。
ワインはイタリアの手ごろなものが用意されており、グラスワインは千円台で楽しむことができます。量もたっぷり注いでくれ、すっかり酔っ払ってしまいました。
アミューズから凝りに凝っており、リコッタチーズとフキノトウが詰まったラヴィオリが早速美味しい。アスパラソバージュを巻いたハムも程よい塩気であり泡が捗ります。
カルパッチョは旬のクエとサヨリという二種類の魚介を主役に、食感の良いスナップエンドウと風味豊かなサルサヴェルデを組み合わせます。上品なクエの旨味と繊細なサヨリの味わいに、スナップエンドウのシャキシャキ感とほのかな甘みが加わり、サルサヴェルデのハーブの香りと塩味、酸味が全体を引き締める。
タイラ貝に赤貝にトリ貝と貝特集。貝特有の磯の香りと旨味が後を引く美味しさ。ホワイトアスパラガスも添えられており、その優しい甘みに舌鼓をうちます。
冷製パスタはフェデリーニ。カツオとトラパニーのソースを上手く併せており、ナッツの香ばしい風味が良く合う。バジルの爽やかな香りとニンニクのコクがアクセントとなり、パスタながら酒の進むひと品です。
パンもひと手間かけており、上質なオリーブオイルと共に、これだけで立派な料理です。
魚料理はアマダイ。パリパリとした食感が楽しめるウロコ焼きにし、旬のそら豆を使ったソースで頂きます。甘鯛の上品な白身の味わいと、そら豆のほのかな甘みが調和する。加えて香ばしく焼いた桜海老も散らしており、その香ばしさがバリ旨い。
ハマグリと菜の花のタリアテッレ。春の訪れを感じさせる食材を起用しており、はまぐりの旨味と菜の花のほのかな苦味が炭水化物によく絡む。実に春らしいひと皿です。
続くパスタはカスミを練り込んだチカテッリ。イカスミの独特の風味とコク、そして黒い色が食欲を刺激し、そのモッチリとした食感がクセになるアオリイカの上品な甘みも見逃せない美味しさです。
お口直しにデコポンのグラニテ。デコポンのみずみずしさと凝縮された甘み、そして心地よい酸味がぎゅっと詰まった清涼感あふれる味わいです。
メインは知多牛のヒレ肉。やや熟成が進んでいるのかジットリとした旨味が支配的で、何とも大人の味わいです。添えられたタケノコはシャキシャキと香ばしく、牛肉との相性も素晴らしい。
〆のパスタはグラム数を指定でき、食べ盛りの私は80グラムでお願いしました。ウニを贅沢に用いており、上品な甘さのトマトソースと良く合います。この日のディナーの締めくくりにふさわしい、印象的なひと皿です。
デザートはイチゴのミルフィーユにヨーグルトのジェラート。サクサクとした食感のパイ生地と、甘酸っぱくジューシーな完熟いちご、濃厚なカスタードクリーム。食感も味わいも豊か。また、ヨーグルトのサッパリ感が爽やかな後味を演出してくれます。
お茶菓子とエスプレッソでフィニッシュ。ごちそうさまでした。

以上を食べ、そこそこ飲んでお会計は2.5万円。これだけ上質な料理を腹いっぱい食べてこの支払金額はお値打ち。東京なら倍近く請求されるかもしれません。パスタをたっぷり摂取できるという意味で「PRIMO PASSO(プリモ パッソ)」に食後感が似てるかも。いずれにせよ私の大好きなタイプのイタリアン。オススメです。

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